本会の呼びかけ人である山下克明氏の新刊『陰陽道―術数と信仰の文化』が発売されました。
倉本一宏監修 王朝時代の実像5(全15巻シリーズ)
臨川書店 税込3,740円(本体3,400円+税) ISBN978-4-653-04705-6
http://www.rinsen.com/linkbooks/ISBN978-4-653-04705-6.htm
本研究会での研究発表に基づく一冊です。
本会の呼びかけ人である山下克明氏の新刊『陰陽道―術数と信仰の文化』が発売されました。
倉本一宏監修 王朝時代の実像5(全15巻シリーズ)
臨川書店 税込3,740円(本体3,400円+税) ISBN978-4-653-04705-6
http://www.rinsen.com/linkbooks/ISBN978-4-653-04705-6.htm
本研究会での研究発表に基づく一冊です。
第13回「陰陽道史研究の会」は4月3日、オンライン会議システムZOOMを使って開催された。今回は、「「簠簋(ホキ)内伝」をめぐる諸問題」と題し、中近世陰陽道史研究の焦点ともいえる『簠簋内伝金烏玉兎集』および、その中で展開される諸説話に関する研究成果の発表となった。これは、『新陰陽道叢書』第4巻民俗・説話篇のテーマとも関わる。今回は小池淳一氏、馬場真理子氏、鈴木耕太郎氏の3名が発表した。
司会の斎藤英喜氏より趣旨説明の後、小池淳一氏が『中世末期東国における「簠簋」の意義―書誌と構成から―』と題して、福島県会津地方で発見された「簠簋」伝本を中心に中世末の東国で同書が果たした意義について発表した。書写された年次が明らかな「簠簋」写本のうち中村璋八『日本陰陽道書の研究』では未検討であった写本を含む諸本について、研究状況・特徴などを解説した。結果、これらの写本が東国における真言宗の拠点寺院に流通している事を指摘。陰陽師が管理しない場での「陰陽道知識」の集約を示す重要な典籍として位置付けた。発表後の質疑応答では、仏教における暦注の受容状況から、本研究は陰陽道の展開ではなく暦の展開として捉えるべきではないかという指摘や、後世に起きる仏教の天文学学習活動(梵暦運動)への影響についての質問が挙がった。
馬場真理子氏による「大雑書における方位神の語り―『簠簋内伝』との関わりを中心に」では、記号的存在であった方位神への認識が、「簠簋」に収められた牛頭天王神話により変化していく様子を、“正当な暦道の言説”と言える『暦林問答集』と、近世庶民層を中心に広く読まれた「大雑書」を通して考察した。「大雑書」が「簠簋」の世界観を受容した度合いが時代と共に変化したことを跡づけた。最後に馬場氏は方位神の視覚イメージについて試論を示した後、総括として多少の差異があれ、方位神の姿や性格を記した「簠簋」の存在は「大雑書」にとって不可欠であったと結んだ。質疑応答では「大雑書」編者を発表者はどう考えるか、という質問や、八将神像の持物について意見が出されていた。
鈴木耕太郎氏は「『簠簋内伝』諸本比較から考える― 巻一を中心に ―」として、「簠簋」の巻一に所収される牛頭天王の物語と暦注部の構成が、伝来する写本で異なる事に焦点を当て、特に内容に差異がある『群書類従』所収本と天理大学付属図書館所蔵「揚憲本」を比較した。氏は場面ごとに内容を比較し、相違点と特徴を明らかにした上で、各版における牛頭天王の物語描写と同巻中に収められる暦注の記述との深い関係を指摘した。そして、今後の検証により各版の作成者と受容層を知りうるという展望を示した。最後に今後の課題として、巻一だけでなく巻二以降の暦注部の異同の確認、他の写本の内容の調査、さらに中部・西日本での「簠簋」の広がりの有無について調査検討する必要性を提示した。
三名の発表の後、山下克明氏が締めくくりとして「簠簋」研究における今後の課題についてまとめた。その中で氏は長らく議論されている「簠簋」成立の諸経緯(成立時期や作者、典拠)および位置付けと社会的影響、暦道を司った賀茂氏が「簠簋」をどう捉えていたか、といった各問題を再度明確化して提示、更なる研究深化の必要性を確認した。
最後に総合質疑が行われ、特に馬場氏の発表にあった「大雑書」の編者にまつわる質疑や感想があがり、「大雑書」の編者が土御門家門人と交流のあった人物の可能性が指摘された他、鈴木氏の発表に関連した牛頭天王説話や晴明説話についての質問が出され、議論が交わされた。
『新陰陽道叢書』第5巻 特論を使用した以下の書評会がオンラインで開かれます。
どなたでも参加可能ですので、詳しくは『新陰陽道叢書』特設ホームページをご覧ください。
※事前の予約が必要です。
【『新陰陽道叢書』特設ホームページ】
https://sites.google.com/view/shin-onmyodo#h.mnj7akjwe8om
【『新陰陽道叢書』Twitterアカウント】
https://twitter.com/shinOnmyodo
【『新陰陽道叢書』Facebookアカウント】
https://www.facebook.com/shinOnmyodo/
【企画展と講演の御案内】福井県おおい町 暦会館 企画展「納田終の伝説と史実」と講演
中世、戦乱を避けて安倍晴明の子孫である土御門家の当主が三代にわたって居住した領地であり、現在もなお陰陽道の系譜を引き継ぐ土御門神道(天社神道)が守られている福井県大飯郡おおい町名田庄にある資料館「暦会館」(谷川泰信 館長)にて、2月1日から令和三年度 暦会館企画展「納田終(のたおい)の伝説と史実」が開催されます。
土御門神道を継承する「天社土御門神道本庁」を始め、同庁の祭祀場である「天壇(安倍氏居館跡地)」と「泰山府君社跡」、当地で生涯を終えた安倍氏(土御門家)当主三代の墓所、奥州安倍氏の伝説がある「薬師堂」、”おはけ神事”や”芝走り”といった特殊神事のある「加茂神社」などの”土御門史蹟”は歴史的に貴重かつ重要であり、同時にロマンあふれる伝説に満ちています。今回の展示会は”土御門史蹟”にまつわる史実と伝説を、史料を中心に紹介していく企画となっています。
同展会期中には「陰陽道史研究の会」の声かけ人でもある梅田千尋氏(京都女子大学)による講演「土御門家史蹟の再発見」もあります(※定員あり)
詳細は「暦会館」HPをご覧ください。
【おおい町 暦会館ホームページ】
最新の陰陽道研究の集大成として刊行されてきました『新陰陽道叢書』も、一区切りとなる第五巻が発売されています。
第5巻は「特論」と題し、通時代的な陰陽道研究の諸課題についての最新の研究成果と考察を収録しました。
詳細は名著出版の特設HPをご覧ください。
※名著出版 『新陰陽道叢書』特設ホームページ(注文・購入できます)
第12回「陰陽道史研究の会」参加レポート 木下琢啓
第12回「陰陽道史研究の会」は10月17日にオンライン会議システム「ZOOM」を使って開催された。今回は順次発刊されている『新陰陽道叢書』の第3巻に当たる近世篇をテーマとして、梅田千尋氏、奈良場 勝氏、嘉数次人氏の三氏の発表があった。
最初に梅田氏が「近世陰陽道史の現段階と展望」として、『新陰陽道叢書』近世篇 編集の趣旨解説をおこなった。『新叢書』近世篇は、これまで主に近世社会史・制度史等の中で比較検討の一素材として取り上げられてきた近世陰陽道が、陰陽道史自体の中ではどう変化を捉えるか、また近世社会の中でどのような影響を与えたかについて、『旧叢書』以降の近世陰陽道史研究の飛躍的な進展と深化が明確に解るように構成したという。
また今回、近世陰陽道および陰陽道組織が占いや暦術を学問として発信し、それに接した近世の各層知識者の中で陰陽道的学知が浸透していた事に注目した研究も取り上げ、西洋の学知が流入していく中でもなお陰陽道およびその知識が多様性・多層性をもって人々に受容されていた事を示す事が出来たのではないかと総括した。
次いで奈良場氏による「近世初期の易神信仰について」は、近世初期の日本に登場した「易神」の存在について、登場の経緯と陰陽道との関りを論じた発表であった。易経を経典の一つとした儒教は元来「怪力乱神を語らず」として神の存在を語るものではなく、また易占についても世界の生成原理として理解されるが故に占いに神が関与する事はないと考えられてきた。それが日本において、中世には道教の「太極図」から「太乙(救苦天尊)」が北辰信仰に、そして近世初期に陰陽道の神である鎮宅霊符神に結びつき、同神が易占の神すなわち「易神」と明言されるに至ったという。ただ、この易神信仰は同じく近世に起きた儒教の独立と朱子学の定着、易占書の流通によって次第に衰退していく事になるが、現在においても神道等にその影響が認められ、今なお日本独自の易の受容によって生まれた易神信仰の一端は様々な形で残っているとの事であった。
質疑応答では、易神と陰陽道特有の「暦神」との関係性についての質問や、鎮宅霊符信仰からの視点でみる易神についての質問、また現代の易の知識や作法が近世以前と異なる事への感想などがあった。
続いて嘉数氏の「寛政改暦と土御門家」は、江戸時代中期に実施された寛政改暦についての研究発表であった。寛政改暦は江戸時代に入って三度目の改暦であったが、民間研究者の登用と西洋天文学の知識が導入された点で、貞享・宝暦と過去二度あった改暦と大きく異なる。嘉数氏は、寛政改暦における政治面での動向、当時の土御門家の天文学のレベル、そして寛政期の改暦プロセスの三点を関心の所在とした。
寛政改暦はこれまで、前回の宝暦改暦で編暦権を奪われた幕府天文方が再びその権利を取り戻す為に、土御門家には改暦を秘していたと考えられてきた。しかし嘉数氏は史料調査によって、改暦の意向と諸経緯の情報の土御門家への伝達について明らかにした。また、幕府および天文方側も土御門家と各種の情報交換を頻りに図っており、相応の待遇をもって接していた事を明らかにした。この他、土御門家が所蔵していなかった典籍を幕府の文庫から貸し出す等の配慮もされており、専ら天文方と土御門家の編暦権を巡る攻防に注目が行きがちになる寛政の改暦事業は、互いの事情がありながらも歩調を合わせて行われていたとの事であった。
質疑応答では、土御門家は天文方の主要層をどの程度認識していたかについての質問や、当時最先端の天文学知識を保有していた仙台藩の例から、東西での情報格差があったのではないかという質問、嘉数氏が使用した「編暦権」という語の適用範囲についての確認があった。
各氏発表の後、総合討議では奈良場氏に対して易神信仰展開の経緯について追加説明を求める声や、各種の質問・確認事項、嘉数氏に対しては京都改暦所で土御門家が天文方の道具を使っての観測をしたことについて、事業完了後、天文方の観測具はどうなるのかについて、また例示された史料に関する質問などがあり、発表者だけでなく参加者からも盛んに意見や情報が交換された。最後には第4巻である民俗・説話篇にも話が及び、参加していた第4巻編者である小池淳一氏を中心に第13回のテーマについても意見交換が行われ、盛会のうちに本会は終わった。『新陰陽道叢書』も折り返しに入り、残すところ第4巻と第5巻となったが、本会はその両巻が、いずれも意欲的なものとなる事を確信させてくれる会であった。
名著出版より刊行中の『新陰陽道叢書』の最新巻、第四巻 民俗・説話篇(小池淳一 篇)が発売となります。詳細は下記URL 特設ページをご覧ください(パンフレット、各巻所収論文の一覧、注文もできます)。
【『新陰陽道叢書』特設ページ】
https://sites.google.com/view/shin-onmyodo/