2021年5月2日日曜日
2021年4月 第11回 陰陽道史研究の会 参加記
第11回陰陽道史研究の会は2021年4月4日に開催された。未だ猛威をふるい続けている新型コロナウイルス感染症予防のため、今回もオンライン会議システム「ZOOM」を利用しての開催であった。
今回は1月14日に刊行された『新陰陽道叢書』第2巻中世篇発刊にちなんで、その編者である赤澤春彦氏、同書に新稿を寄せられた下村周太郎氏、遠藤珠紀氏の3名が発表した。
最初に赤澤春彦氏が「『新陰陽道叢書中世巻』と中世陰陽道研究」という題で、『新陰陽道叢書』中世篇の意義および意図、中世陰陽道史研究の現状について編者の立場から概説した。
赤澤氏はまず旧『陰陽道叢書』における中世陰陽道研究の論点確認と課題をまとめ、それらがどの程度克服されてきたかを解説。『新陰陽道叢書』中世篇の持つ意義、これまでの研究成果と、研究進展で新たに浮かび上がった課題や研究テーマを紹介・共有・提言する目的を持っていることを強調した。つづいて同書収録の論文と各論の要点についてダイジェストで紹介。陰陽道史研究にとって中世は、一連の陰陽道変遷の中で共通する問題点の有無を確認する上で重要な時代であるとまとめた。
下村周太郎氏は「中世国家論と陰陽道研究」と題し、「中世国家論」において陰陽道研究が持つ意義について著名な学説との関りから考察した。
中世の宗教体制論は、主に「権門体制論」に基づく「顕密体制論」と、「東国国家論」に基づく「武家的体制仏教論」という大きく二つの学説の影響の下で展開されており、陰陽道に対する評価については、前者は「顕密体制」の一要素であったとするのに対し、後者は神祇信仰と仏教に並ぶ一つの宗教勢力であり、なおかつ神祇と仏教を接合する役割を有していたと見なされていたという。 この相克する国家論と宗教体制論のいずれが中世における陰陽道の位置付けとして妥当かという視点から下村氏は、鎌倉・室町両幕府における「天変地異祈祷」の位置づけに注目した。
鎌倉期、三代将軍実朝の時代には天変地異発生時の「内典」仏教と「外典」陰陽道の合同による祈祷=天変地異祈祷が「国家的祈祷」として確立されており、その本質は朝廷で行われる祈祷と同質であったという。そして室町幕府における天変地異祈祷も鎌倉幕府の宗教体制の継承・踏襲であり、室町幕府が国家的祈祷の主宰権を掌握し、権力的に朝廷を上回ろうとしたという見方への疑問を示した。また、「権門体制論」「顕密体制論」をふまえて、顕密仏教体制の一員として陰陽道を位置づけた。
遠藤珠紀氏は「天正10年閏月問題から見た中世末期の暦道」と題し、天正10年(1582)に織田信長が閏月の配置を巡る問題から朝廷の暦に疑念を抱いた一件を取り上げて、中世末期における暦道の実態を調査した結果について発表した。
この一件は、朝廷の暦では天正11年に閏正月が設定されている閏月について、天正10年に閏12月があるのではないかと信長が話した事を発端とする。これは濃尾地方の暦に閏12月が置かれていた事が原因であった。時の陰陽頭土御門久脩や勘解由小路在昌らは相談の結果、閏12月はないと信長に回答。信長も一旦はこれを受け入れたが、6月1日に上洛の際に再度「閏12月」の話を持ち出したという。結局この問題は翌2日に本能寺で信長が討たれた事で話は終わっているが、遠藤氏によればこの一件から当時の暦を巡る事情が見えてくるという。
中世には「地方暦」が登場した。これらの地方暦も元は「宣明暦」が基礎となっているが、次第に各地で独自のルールや調整法が確立されていった結果、朝廷の暦算との間に齟齬が生じることもあったという。知識の伝授には地方に移住・滞在するようになった官人陰陽師との関係が存在した可能性もある。信長が持ち出してきた閏月の問題は、濃尾の暦と朝廷の暦とで閏月の計算方法に齟齬があった事が原因の一つであった。また信長が再度閏月の問題を出した甲州征伐後という時期に注目し、甲斐・信濃でも濃尾地方と同じ閏12月が置かれた暦を使用していた事が、影響したとの見解を示す。
さらに、朝廷において暦道を司っていた賀茂氏勘解由小路家がこの時期断絶を見た。暦の作成と献上は実質的に土御門家が担当する事になった。朝廷で造暦を司る勘解由小路家、さらには土御門家も後継者不在と財政逼迫に直面して作業に支障をきたすこともあった。 天正10年閏月問題はしばしば「信長と天皇との問題」として捉えられがちだが、それだけに収束させる必要はなく、同時期の暦を巡る環境を物語る事件として位置づけた報告であった。
3名の発表後、総合討論と質疑応答があり、会は終了した。前会に引き続き、今会も『新陰陽道叢書』の続篇刊行にちなんだテーマで意欲的な発表が行われた。次会も精力的な発表に期待したい。
2021年4月2日金曜日
4月4日 第11回「陰陽道史研究の会」ご案内
第11回「陰陽道史研究の会」を、以下の通り開催い
会直前ではありますが、申し込み人数に若干の余裕がありますので、ご関心がありましたらご参加ください。
大変お手数ですが、ご参加を希望される方は、
追ってZOOMの会議IDとパスワードを送付したいと思います。
日時: 2021年4月4日(日) 13:00~17:00 ZOOM によるオンライン開催
テーマ:中世陰陽道史研究の最前線
申し込みフォーム
https://forms.gle/
陰陽道史研究の会 呼びかけ人
山下克明 斎藤英喜 梅田千尋 赤澤春彦
◇『新陰陽道叢書』第2巻中世 が刊行されました。下記に特設サイトを設けております。本研究会
https://sites.google.com/view/
2021年2月28日日曜日
『新陰陽道叢書』続刊の刊行時期について【お知らせ】
名著出版より好評発刊中の『新陰陽道叢書』は、現在のところ第1巻(古代)と第2巻(中世)が刊行されています。
ただし第2巻以来、諸事情により予定していた各巻刊行時期がやや遅れております。従って、第3巻(近世)以降の各巻刊行時期も当初予定より遅れるかと思われます。
各位におかれましてはお手数をおかけいたしますが、なにとぞご寛恕の上、ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。
なお、発刊元である名著出版様のHPおよび公式の情報(Twitter,Facebook等)では既に告知されているようですが、第3巻(近世)以降の刊行予定は以下のようになるかと思われます。
『新陰陽道叢書』 第3巻(近世篇)以降の刊行予定
●第3巻(近世)⇒2021年 4月下旬
●第4巻(民俗・説話)⇒6月
●第5巻(特論)⇒9月
詳しくは・・・
名著出版HP
https://www.meicho.co.jp/
『新陰陽道叢書』特設HP
https://sites.google.com/view/shin-onmyodo/
2021年2月17日水曜日
新刊のご紹介 『現代思想』2021年5月臨時増刊号 総特集=陰陽道・修験道を考える
青土社より発刊されてる『現代思想』の2021年5月号は、臨時増刊号として「総特集 陰陽道・修験道を考える」と題し、陰陽道と修験道の研究の最前線にいる研究者の論考が一堂に会する事となりました。
陰陽道についての論考は、当会の声掛け人および当会参加の各氏による最新の研究成果が掲載される、まさに決定版・永久保存版となります。
是非とも手に取っていただき、絶賛刊行中の『新陰陽道叢書』(名著出版、第2巻 中世篇まで既刊)と共にご一読くださいますよう、お願い申し上げます。
【書籍情報】
『現代思想』2021年5月 臨時増刊号 「総特集 陰陽道・修験道を考える」
列島の古層にある信仰により近いように思われる陰陽道と修験道はいったいどのように形成され、そして後世にどのようなかたちで受け継がれているのか。日本の宗教・信仰を広い視野のなかで思考しつつ、陰陽道と修験道を架橋しながら、さまざまな日本の思想とのかかわりを考える。これまでにない陰陽道・修験道の決定版。
【論考執筆者】
斎藤英喜/細井浩志/赤澤春彦/梅田千尋/林淳/鈴木正崇/長谷川賢二/小松和彦/山下克明/ハイエク・マティアス/水口幹記/高田義人/鈴木耕太郎/宮家準/時枝務/徳永誓子/久保康顕/小池淳一/大内典/天田顕徳/小山聡子/星優也/彌永信美/安藤礼二/ファビオ・ランベッリ/小川豊雄/原田信男/伊藤聡/岩田重則/碧海寿広/木村朗子/他
2021年4月14日発売予定
予定価格 2400円+税
詳細は・・・
青土社ホームページ 『現代思想』の当該ページをご覧ください。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3552
2021年1月16日土曜日
『新 陰陽道叢書』中世篇、発売しました
昨年より刊行が始まった、最新の陰陽道研究の集成『新 陰陽道叢書』(全5巻、順次刊行)
その第2巻にあたる「中世篇」が2021年1月14日に発売となりました。
諸般の事情により当初の発売予定日から遅れてしまいましたが、先に刊行・発売されている第1巻「古代篇」に同じく、中世陰陽道研究の最新研究成果を集成したボリューム満点の一冊となっておりますので、振るって御購入いただきますよう、お願い申し上げます。
『新 陰陽道叢書』第二巻 中世 赤澤春彦 編 名著出版
販売価格:9,900円(税900円)
<『新 陰陽道叢書』各巻の内容、購入と予約は・・・>
名著出版『新 陰陽道叢書』特設ホームページ
https://sites.google.com/view/shin-onmyodo/
Twitter公式アカウント https://twitter.com/shinOnmyodo?s=20
Facebook公式アカウント https://www.facebook.com/shinOnmyodo
※名著出版ホームページ以外でも、amazonや紀伊国屋書店WEBなどでも販売しております。
※このページ(「陰陽道史研究の会」HP)では注文出来ませんので、上記の各書店のページ、もしくはお近くの書店などへ御注文下さい。
2020年12月2日水曜日
2020年10月第10回陰陽道史研究の会参加記
■ 第10回 陰陽道史研究の会参加記 木下 琢啓
第10回陰陽道史研究の会は2020年10月4日に開催された。世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染予防のため、今回はオンライン会議システム「ZOOM」を利用しての開催となった。
今回は『新 陰陽道叢書』の刊行開始にともない、前月に発刊された第1巻・古代にちなんで「古代陰陽道の新視点」をテーマに、細井浩志氏と水口幹記氏による発表があった。
まず細井浩志氏は「陰陽道の定義について―『新陰陽道叢書第一巻古代』の成果による―」と題し、『新 陰陽道叢書』第1巻・古代篇に所収の論文で試みられた、新しい陰陽道の定義と成立時期の再考論について発表した。
まず先行研究における定義と成立期の確認があり、細井氏は村山修一氏による成立説の問題点と、山下克明氏による成立説の妥当性と限界を示し、陰陽道の定義と成立時期について再度捉えなおしが出来るのではないかと問題提起した。
そこで細井氏は民間で雑多な信仰を担った「法師陰陽師」と呼ばれる存在が陰陽道の新しい定義を考えるうえでの重要なポイントであると注目。初期陰陽道には確固とした「正統な術」がなく、また法師陰陽師も貴族に奉仕している事から、初期の段階では朝廷陰陽師(官人陰陽師)以外の術士も「陰陽師」であり、彼らの取り扱う占術・呪術も「陰陽道」と認識されていたのではないか、とした。
これまでの陰陽道研究は朝廷と民間とを区分して研究されがちであったが、今回の細井氏による研究成果は陰陽道独特の多様性と可変性を重視し、「陰陽道」の語自体の裾野を広げる事によって定義と成立時期を再検討した、意欲的かつ革新的な内容であった。
そして最後に細井氏は、この研究成果が試論である事を強調され、今後より多くの研究者によって定義論や成立期等の基礎的研究が深化していく事に期待をしている、という言葉をもって発表を終えた。
質疑応答では、細井氏の比定する陰陽道成立時期についての質問や、呪禁を陰陽師の呼称範囲に入るか否かについての質問で白熱した。
水口幹記氏は「<術数文化>という可能性について―「陰陽道」との関係を中心に―」と題して、術数文化という分野からの古代陰陽道へのアプローチを試みられた。
「術数(数術)」とは古代中国において数多の科学・技術・学問等、広範囲かつ多様な分野を指す語で、陰陽道が主に取り扱った天文・暦・占術なども、この「術数」数えられる。水口氏は今回、“術数から派生した文化”=術数文化として陰陽道を捉える事は可能かという問題を提示して、その解明を試みられた。
まず術数の中でも特に陰陽道との関係が深い天文・暦算が中国ではどのようにして形成されたかについて、史料と共に時系列に概観。古代中国ではインド系の世襲一族や太史局役人と共に、呪術者であり、諸説にも通じた僧侶(密教僧)も天文学・暦算に関与し、発展に寄与していた事を説明した。
次に日本で“宿曜道”形成の契機となった『符天暦』伝来に注目。宿曜経の日本伝播は“新しい術数の伝来”であるとし、術数文化は僧侶のもつ知識や呪力に付随するという特徴を示された。
その上で水口氏は、陰陽道は元来仏教(僧侶)に付随して展開された術数の一部が「仏教と決別した事」が成立の一契機になったのではないかと考察。そして陰陽道も宿曜道も共に術数を利用して成立・発展した<術数文化>の一形態であり、今後は術数文化研究において陰陽道研究は重要な役割を果たすであろうと話して発表を終えた。
質疑応答では宿曜道成立に関する質問や、陰陽道が民間にも浸透していくように術数も民間に浸透していったのか等の質問が出た。
最後に総合討議として発表者二氏に対して再度質疑応答と意見聴取が行われたが、陰陽道成立において仏教との関係だけでなく神祇官および神祇信仰との関わりが如何なるものであったかという問題、そして術数が同じく神祇へ浸透していたか否か等の質問が挙がり、発表者による回答があった。
今会は『新陰陽道叢書』第一巻である古代篇の発刊に因んで、最新の研究を基にして陰陽道の定義や成立の捉えなおしを試みる、壮大かつ挑戦的な内容となった。さらに陰陽道研究からだけでなく術数研究という見地から改めて陰陽道を概観する好機にもなった。
そして、これから順次発刊されていく『新陰陽道叢書』各巻が、今後の研究進展に大きく寄与するであろうと強く期待させてくれる会となった。
2020年9月10日木曜日
『新 陰陽道叢書』発刊開始のおしらせ/今後出版される書籍のご案内
★☆『新 陰陽道叢書』(全5巻)、いよいよ発刊開始!☆★
平成初期、1990年代初頭に発表された『陰陽道叢書』(村山修一ら編、全4巻)出版より四半世紀・・・質・量ともに厚みを増した陰陽道研究の到達点を示し、陰陽道の通史を展望する――
名著出版創業50周年記念企画でもあり、最新の陰陽道研究の成果の集大成ともいえる『新 陰陽道叢書』(全5巻)のうち、「第1巻 古代」(細井浩志 編)が発刊されました。
以降、「第2巻 中世」(赤澤春彦 編)、「第3巻 近世」(梅田千尋 編)、「第4巻 民俗・説話」(小池淳一 編)、「第5巻 特論」(林 淳 編)が順次発刊されていきます。
<刊行予定>
「第1巻 古代」細井浩志 編 既刊(2020年9月発売)
「第2巻 中世」赤澤春彦 編 2020年12月刊行予定
「第3巻 近世」梅田千尋 編 2021年 2月刊行予定
「第4巻 民俗・説話」小池淳一 編 2021年4月刊行予定
「第5巻 特論」林 淳 編 2021年6月刊行予定
本体価格:いずれも 9000円(税別)
刊行元:株式会社 名著出版
ご注文は最寄りの書店、もしくは名著出版ホームページ、『新 陰陽道叢書』特設ホームページよりお願い申し上げます。
(株)名著出版 オンラインショップ https://www.meicho.co.jp/
『新 陰陽道叢書』特設HP https://sites.google.com/view/shin-onmyodo/
また、ツイッターアカウントも設置しております。
https://twitter.com/shinOnmyodo
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★☆吉川弘文館 人物叢書『安倍晴明』を細井浩志氏が担当されます☆★
吉川弘文館が発刊している「人物叢書」シリーズに「安倍晴明」が加わることになりました。その執筆には上記で紹介しました『新 陰陽道叢書』第1巻の編者でもある細井浩志氏が担当される事となりました。続報は吉川弘文館ホームページをご確認ください。
吉川弘文館HP
http://www.yoshikawa-k.co.jp/news/n36461.html
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★☆高田義人氏新刊『平安貴族社会と技能官人』が10月に発売されます☆★
陰陽道史研究の会にも御参加いただいている高田義人氏の新著『平安貴族社会と技能官人(古代史選書36)』が10月30日に同成社より発売されます。
<内容概説>
国家統治に必要な学問や知識を司った技能官人が、陰陽道や医道などを家業とする氏族として成立する過程を追い、その存在形態を描く。
詳細は同成社ホームページをご確認ください。
同成社HP
