■第9回「陰陽道史研究の会」参加記 宮崎真由
2020年3月1日(日)、大東文化大学大東文化会館にて第9回陰陽道史研究の会が開催された。コロナウイルスの影響により参加者は20名とやや少ないものの、今回のテーマである「陰陽道の神々」にちなみ、会場には蘇民将来符等の疫病対策の呪具・呪符が持ち寄られ、展示された。
まず、鈴木耕太郎氏による「陰陽道の中の牛頭天王」の報告では、牛頭天王信仰と陰陽道とのつながりについて、中世神話という視覚から検討され、『簠簋内伝』における暦神・天道神と牛頭天王、あるいは他の牛頭天王信仰に関する存在と暦神との同体関係を示された。
さらに、『峰相記』や妙法院蔵『神像絵巻』、『牛頭天王御縁起』等を確認し、牛頭天王の神性が王城・国土の守護を司るとともに暦神であること、そして牛頭天王が蘇民将来を庇護(徐疫・防疫)していることなどが指摘された。
次いで、梅野光興氏による「いざなぎ流の「大土公」を考える―中国・四国地方の土公信仰との関連で―」と題した報告では、梅野氏が高知県旧物部村で行った現地調査の際に撮影した写真を上映し、解説を加えながら進められた。いざなぎ流の大土公祭文については、祭文の構成が、創成神話的な部分とばんごん大王と5人の王子の物語であることが説明された。そして、中国・四国地方の王子神楽では、ばんごん大王の死後、5人の王子の争いを調停する人物名が異なる点などが指摘された。
最後に、山下克明氏と斎藤英喜氏よりコメントがあった。山下氏は、「陰陽道の神と祭祀」と題した報告で、従来の陰陽道祭祀研究は、祭祀の成立時期、性格の分類、祭文内容及びその影響・展開等が中心であり、中国文化との関係性から呪術や祭祀を検討するという視覚が希薄だったことを指摘し、中国古代・中世の祭祀史料を紹介された。さらに、各祭祀の典拠とされている書物と漢籍との記述内容の比較まで踏み込み、祭祀研究をさらに深化させる手掛りを提示された。
斎藤氏は、鈴木報告の意義は中世神話という視点から牛頭天王がどのように変容したかを論じた点であると評価した。梅野報告に対しては、現地では祭文をきちんと読めない太夫は病気が治せないと言われていることを紹介した。
総合討論では、『簠簋内伝』や各縁起などのテキスト研究に関する質問や暦注神と式盤神という視点の確認、神楽などの芸能と陰陽道の関係などに議論が及んだ。今回の研究会を通して、陰陽道の枠組みを大きく考えることが出来るのではないかという認識が改めて共有された。